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大学生の頃。
嘔吐恐怖症だった私を、
一番苦しめていたものがあります。
それは、
「吐くこと」
そのものではありません。
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もちろん、
吐くことも怖かった。
でも、
私を一番苦しめていたのは。
「吐くかもしれない」
という不安でした。
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この不安には、
「予期不安」
という名前があります。
まだ何も起きていないのに、
悪いことが起きるかもしれない。
そう考えて、
強い不安を感じてしまうことです。
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私の場合は、
「気持ち悪くなったらどうしよう」
「吐いたらどうしよう」
「逃げられなかったらどうしよう」
そんな考えが、
一日中頭の中をぐるぐる回っていました。
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朝起きた瞬間から始まる。
今日は大丈夫かな。
気持ち悪くならないかな。
大学へ行けるかな。
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ご飯を食べる前も。
これを食べて、
具合が悪くならないかな。
食中毒にならないかな。
吐いたらどうしよう。
──────
外へ出る前も。
電車の中で気持ち悪くなったら。
教室で気持ち悪くなったら。
逃げられなかったら。
──────
お風呂に入る前も。
密室で気持ち悪くなったら。
裸のまま動けなくなったら。
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まだ何も起きていないのに。
私の頭の中では、
ずっと最悪の未来が再生されていました。
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そして。
予期不安の怖いところは、
不安そのものが、
身体の症状として現れることでした。
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当時の私は、
・動悸
・震え
・冷や汗
・吐き気
の症状が現れていました。
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吐き気を感じる。
↓
不安になる。
↓
身体の様子を確認する。
↓
さらに吐き気が気になる。
↓
もっと不安になる。
↓
さらに吐き気を感じる。
──────
そんな悪循環の中で、
毎日を過ごしていました。
──────
気づけば私は、
一日のほとんどを、
自分の身体の監視に使っていました。
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いつもより、
少し胃が重い気がする。
少し喉が変な気がする。
少しお腹が痛い気がする。
少し心臓の鼓動が早い気がする。
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普通なら気にならないような変化も、
全部、
「吐く前兆かもしれない」
に変換されてしまう。
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今思えば、私はずっと
“吐き気を探していた”
のかもしれません。
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そして。
今振り返ってみると。
私はあれだけ毎日怯えていたのに、
当時、
一度も吐いていません。
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食後も。
大学でも。
電車の中でも。
外出先でも。
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毎日、
「今日こそ吐くかもしれない」
と思っていました。
トイレの中で長時間過ごした日も、
何度もあります。
──────
でも。
その日は一度も来ませんでした。
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嘔吐恐怖症を発症した日から今日まで、
一度も吐いていません。
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あれほど怖がっていたのに。
あれほど警戒していたのに。
恐れていた未来が現実になったことは、
一度もありませんでした。
──────
それなのに。
当時の私は、
毎日苦しめられていました。
起きた出来事ではなく、
”起きるかもしれない未来”に。
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もちろん。
だからといって、
「考えすぎだった」
とは思いません。
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当時の私にとっては、
その恐怖は本物でした。
心も身体も、本当に苦しかった。
毎日生き抜くことに必死でした。
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「気にしすぎだ」
「気にしなければいい」
「未来のことなんてわからないんだから、考えても意味がない」
そんなことは、
当時の自分でも十分分かっていました。
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でも。
それができたら苦労しません。
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私は何度も、
考えないようにしよう。
忘れよう。
気にしないようにしよう。
そう思いました。
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でも、
考えないようにすればするほど、
余計に考えてしまう。
だから苦しかった。
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四六時中、付きまとう不安。
思うようにできない自分。
理想と現実のギャップ。
毎日泣いていた時期もあります。
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今振り返ると。
予期不安は、
私の世界を少しずつ狭くしていました。
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食べること。
外へ出ること。
電車に乗ること。
お風呂に入ること。
今まで当たり前にできていたことが、
少しずつ怖くなっていく。
少しずつできなくなっていく。
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当時の私は、
ただ一日を終えることで精いっぱいでした。
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でも今は思います。
あの頃の私は、
弱かったんじゃない。
怖い中でも、
毎日を生きようとしていました。
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もし今、
予期不安で苦しんでいる方がいたら。
「まだ何も起きていないのに怖い」
その感覚は、
決しておかしなものではありません。
あなたが弱いわけでもありません。
私は、そう思います。
──────
少なくとも私は、
同じように苦しんでいました。
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そして私の場合、
不安を完全になくそうとするより、
不安があっても少しずつ生活を続ける中で、
症状は少しずつ和らいでいきました。
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この症状がどう和らいでいったのか。
私が何をきっかけに少しずつ外へ出られるようになったのか。
それは、また別の記事で綴ろうと思います。
──────
「こんな人もいるんだ」
そう思ってもらえるだけで嬉しいです。
この場所が、
少しでも安心できる場所になりますように。



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