出かける予定が入っただけで、不安になっていた頃の話

03. 嘔吐恐怖症

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大学生の頃。

私は、
外へ出ることが怖くなっていました。

電車に乗ること。

人の多い場所へ行くこと。

知らない場所へ行くこと。

そういうものが、
どんどん苦手になっていきました。

──────

たとえば。

明日、
電車に乗って出かける予定がある。

ただ、それだけ。

普通なら、

「明日は○時に起きて、
○時の電車に乗ろう」

それくらいで終わる話です。

でも当時の私は、
予定が決まった瞬間から不安が押し寄せてきて。

明日、大丈夫かな。

途中で気持ち悪くなったらどうしよう。

電車の中で吐きたくなったら?

途中で降りたくなったら?

人がたくさんいたら?

すぐにトイレへ行けなかったら?

そんなことを、
まだ家にいるうちから考えていました。

──────

まだ何も起きていない。

明日はまだ来ていない。

それなのに。

頭の中では、
もう何度も「その場面」を経験していて。

電車に乗る。
↓
電車の扉が閉まった瞬間、
少し気持ち悪くなる。
↓
「吐くかもしれない」と思う。
↓
怖くなる。
動悸や震えが始まる。
↓
電車を降りたくなる。
↓
でも、
次の駅まで降りられない。

そんな未来を、
何度も想像していました。

そして。

想像するたびに、
本当に怖くなる。

──────

出かける予定がある日は、
その予定が始まるずっと前から、
疲れきっていました。

前日の夜から、落ち着かない。

朝起きても、まだ不安。

出かける準備をしながら、

「今日、大丈夫かな」

とずっと考える。

家を出てからも、

「今のところ大丈夫」

と自分に言い聞かせる。

でも、
少しでも身体に違和感があると。

「やっぱりダメかもしれない」

と、また不安になる。

目的地に着くまでが、
本当に長く感じました。

──────

特に、
電車がものすごく苦手になりました。

電車そのものが嫌いだったわけではありません。

ただ、

「ここで気持ち悪くなったらどうしよう」

という気持ちが、
いつも頭の片隅にあって。

座れるかな。

混んでないかな。

次の駅まで長くないかな。

近くにトイレはあるかな。

そんなことばかり考えていました。

──────

そして、人混みも。

人が多い場所にいると、
それだけで逃げにくく感じて。

もし、
ここで気持ち悪くなったら。

もし、
吐きそうになったら。

周りにたくさん人がいる。

みんながこっちを見たらどうしよう。

そんなことを考えると、
その場所にいるだけで苦しくなりました。

──────

だから私は、
出かけるときに色々なことを考えるようになりました。

トイレの場所。

帰りの時間。

電車の時間。

途中で降りて休める場所。

もしものときに備えて、
袋を持っていく。

できるだけ安心できるように、
準備する。

でも。

準備すればするほど、
「何か起きるかもしれない」という不安が
押し寄せてくる。

そして、外出すること自体が
どんどん怖く、苦しくなっていく。

──────

一番苦しかったのは。

「行きたくない」と思っている自分と、

「行かなきゃ」と思っている自分が、
ずっと頭の中でぶつかっていたことでした。

行きたい。

でも怖い。

行かなきゃ。

でも怖い。

せっかくの予定なのに、
楽しみより不安のほうが大きくて。

「明日楽しみだな」

ではなく。

「明日、大丈夫かな」

になってしまう。

それが、
悲しかったです。

──────

周りから見たら。

ただ、
出かけるだけ。

ただ、
電車に乗るだけ。

ただ、
人の多い場所へ行くだけ。

でも私の中では、
すべてが恐怖で。

まだ何も起きていないのに。

何も起きていないからこそ。

「もし起きたら」

という想像が、
どんどん膨らんでいく。

──────

だから、
予定を断ってしまうこともありました。

「今日はやめておこう」

そう決めた瞬間。

少しホッとする。

怖いことをしなくていい。

電車に乗らなくていい。

人混みに行かなくていい。

その安心感は、
本当に大きかったです。

でも。

そのあとに、
少しだけ悲しくなる。

本当は行きたかった。

本当は普通に出かけたかった。

みんなみたいに、
予定を楽しみたかった。

なのに。

「怖い」という気持ちに、
負けてしまったように感じる。

そんな自分を、
責めることもありました。

──────

本当は、
普通に出かけたかった。

普通に電車に乗りたかった。

普通に友達と会いたかった。

ただ。

「もし気持ち悪くなったら」

という不安が、
その全部にくっついてきて。

──────

そして今。

私は、
不安があっても外へ出られる日が増えました。

もちろん、
今でも不安になることはあります。

電車の中で、
少し身体の調子が気になることもあります。

「大丈夫かな」
と思うこともあります。

でも。

昔とは、
少し違います。

不安になったからといって、

「もう無理だ」

と、すぐに思わなくなりました。

──────

以前は。

「いつか不安がなくなる日がきたら、
思いっきり出かけよう」

「この症状が治ったら、
いろんな場所へ行こう」

そう思っていました。

でも、
そんな日はなかなか来なくて。

だから少しずつ。

不安があるまま、
外へ出る。

不安があるまま、
電車に乗る。

不安があるまま、
目的地まで行ってみる。

すると。

「あ、今日も大丈夫だった」

と思える日が、
少しずつ増えていきました。

そして、外出へのハードルが、
少しずつ、少しずつ、
低くなっていきました。

──────

もちろん。

「外に出れば治ります」

と言いたいわけではありません。

私にとっては、
そうだったというだけです。

今でも、
不安になる日はあります。

それでも。

「不安がある=何もできない」

ではない。

それを少しずつ、
経験して、
分かるようになってきました。

──────

もし今。

出かける予定が入っただけで、
不安になってしまう人がいたら。

「まだ何も起きていないのに、
どうしてこんなに怖いんだろう」

と思うかもしれません。

私も、
そうでした。

予定の日が近づくだけで、
不安になる。

朝から、
ずっと落ち着かない。

出かけることを考えるだけで、
疲れてしまう。

でもそれは。

本当は楽しみたいからこそ、
「大丈夫であってほしい」と願っていたから。

私は、
今ではそんなふうに思っています。

──────

昔の私に、

「もっと気楽に考えて」

と言っても、
きっと無理だったと思います。

怖いものは、怖かった。

──────

電車に乗るだけでも。

人混みを歩くだけでも。

予定の場所まで行くだけでも。

私にとっては、
大きな一歩だった。

誰かにとっては、
当たり前のことでも。

その当たり前が、
とても難しい時期がありました。

それでも私は、
少しずつ。

不安を抱えたままでも、
外へ出られるようになりました。

完璧に怖くなくなったわけではありません。

でも。

不安があっても、
出かけられる。

不安があっても、
帰ってこられる。

そんな経験が、
少しずつ私の中に増えていきました。

──────

もし今、
外へ出ることが怖くなっている方がいたら。

「普通に出かけられない自分はダメだ」

なんて、
思わないでくださいね。

家を出る。

電車に乗る。

人の中にいる。

ただそれだけのことに、
大きな勇気が必要な日もあります。

見えないところで、
あなたはたくさん頑張っています。

私にも、
そんな時期がありました。

「こんな人もいるんだ」

そう思ってもらえるだけで、
嬉しいです。

この場所が、
少しでも安心して息をつける場所になりますように。

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