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大学生の頃。
私は、
外へ出ることが怖くなっていました。
電車に乗ること。
人の多い場所へ行くこと。
知らない場所へ行くこと。
そういうものが、
どんどん苦手になっていきました。
──────
たとえば。
明日、
電車に乗って出かける予定がある。
ただ、それだけ。
普通なら、
「明日は○時に起きて、
○時の電車に乗ろう」
それくらいで終わる話です。
でも当時の私は、
予定が決まった瞬間から不安が押し寄せてきて。
明日、大丈夫かな。
途中で気持ち悪くなったらどうしよう。
電車の中で吐きたくなったら?
途中で降りたくなったら?
人がたくさんいたら?
すぐにトイレへ行けなかったら?
そんなことを、
まだ家にいるうちから考えていました。
──────
まだ何も起きていない。
明日はまだ来ていない。
それなのに。
頭の中では、
もう何度も「その場面」を経験していて。
電車に乗る。
↓
電車の扉が閉まった瞬間、
少し気持ち悪くなる。
↓
「吐くかもしれない」と思う。
↓
怖くなる。
動悸や震えが始まる。
↓
電車を降りたくなる。
↓
でも、
次の駅まで降りられない。
そんな未来を、
何度も想像していました。
そして。
想像するたびに、
本当に怖くなる。
──────
出かける予定がある日は、
その予定が始まるずっと前から、
疲れきっていました。
前日の夜から、落ち着かない。
朝起きても、まだ不安。
出かける準備をしながら、
「今日、大丈夫かな」
とずっと考える。
家を出てからも、
「今のところ大丈夫」
と自分に言い聞かせる。
でも、
少しでも身体に違和感があると。
「やっぱりダメかもしれない」
と、また不安になる。
目的地に着くまでが、
本当に長く感じました。
──────
特に、
電車がものすごく苦手になりました。
電車そのものが嫌いだったわけではありません。
ただ、
「ここで気持ち悪くなったらどうしよう」
という気持ちが、
いつも頭の片隅にあって。
座れるかな。
混んでないかな。
次の駅まで長くないかな。
近くにトイレはあるかな。
そんなことばかり考えていました。
──────
そして、人混みも。
人が多い場所にいると、
それだけで逃げにくく感じて。
もし、
ここで気持ち悪くなったら。
もし、
吐きそうになったら。
周りにたくさん人がいる。
みんながこっちを見たらどうしよう。
そんなことを考えると、
その場所にいるだけで苦しくなりました。
──────
だから私は、
出かけるときに色々なことを考えるようになりました。
トイレの場所。
帰りの時間。
電車の時間。
途中で降りて休める場所。
もしものときに備えて、
袋を持っていく。
できるだけ安心できるように、
準備する。
でも。
準備すればするほど、
「何か起きるかもしれない」という不安が
押し寄せてくる。
そして、外出すること自体が
どんどん怖く、苦しくなっていく。
──────
一番苦しかったのは。
「行きたくない」と思っている自分と、
「行かなきゃ」と思っている自分が、
ずっと頭の中でぶつかっていたことでした。
行きたい。
でも怖い。
行かなきゃ。
でも怖い。
せっかくの予定なのに、
楽しみより不安のほうが大きくて。
「明日楽しみだな」
ではなく。
「明日、大丈夫かな」
になってしまう。
それが、
悲しかったです。
──────
周りから見たら。
ただ、
出かけるだけ。
ただ、
電車に乗るだけ。
ただ、
人の多い場所へ行くだけ。
でも私の中では、
すべてが恐怖で。
まだ何も起きていないのに。
何も起きていないからこそ。
「もし起きたら」
という想像が、
どんどん膨らんでいく。
──────
だから、
予定を断ってしまうこともありました。
「今日はやめておこう」
そう決めた瞬間。
少しホッとする。
怖いことをしなくていい。
電車に乗らなくていい。
人混みに行かなくていい。
その安心感は、
本当に大きかったです。
でも。
そのあとに、
少しだけ悲しくなる。
本当は行きたかった。
本当は普通に出かけたかった。
みんなみたいに、
予定を楽しみたかった。
なのに。
「怖い」という気持ちに、
負けてしまったように感じる。
そんな自分を、
責めることもありました。
──────
本当は、
普通に出かけたかった。
普通に電車に乗りたかった。
普通に友達と会いたかった。
ただ。
「もし気持ち悪くなったら」
という不安が、
その全部にくっついてきて。
──────
そして今。
私は、
不安があっても外へ出られる日が増えました。
もちろん、
今でも不安になることはあります。
電車の中で、
少し身体の調子が気になることもあります。
「大丈夫かな」
と思うこともあります。
でも。
昔とは、
少し違います。
不安になったからといって、
「もう無理だ」
と、すぐに思わなくなりました。
──────
以前は。
「いつか不安がなくなる日がきたら、
思いっきり出かけよう」
「この症状が治ったら、
いろんな場所へ行こう」
そう思っていました。
でも、
そんな日はなかなか来なくて。
だから少しずつ。
不安があるまま、
外へ出る。
不安があるまま、
電車に乗る。
不安があるまま、
目的地まで行ってみる。
すると。
「あ、今日も大丈夫だった」
と思える日が、
少しずつ増えていきました。
そして、外出へのハードルが、
少しずつ、少しずつ、
低くなっていきました。
──────
もちろん。
「外に出れば治ります」
と言いたいわけではありません。
私にとっては、
そうだったというだけです。
今でも、
不安になる日はあります。
それでも。
「不安がある=何もできない」
ではない。
それを少しずつ、
経験して、
分かるようになってきました。
──────
もし今。
出かける予定が入っただけで、
不安になってしまう人がいたら。
「まだ何も起きていないのに、
どうしてこんなに怖いんだろう」
と思うかもしれません。
私も、
そうでした。
予定の日が近づくだけで、
不安になる。
朝から、
ずっと落ち着かない。
出かけることを考えるだけで、
疲れてしまう。
でもそれは。
本当は楽しみたいからこそ、
「大丈夫であってほしい」と願っていたから。
私は、
今ではそんなふうに思っています。
──────
昔の私に、
「もっと気楽に考えて」
と言っても、
きっと無理だったと思います。
怖いものは、怖かった。
──────
電車に乗るだけでも。
人混みを歩くだけでも。
予定の場所まで行くだけでも。
私にとっては、
大きな一歩だった。
誰かにとっては、
当たり前のことでも。
その当たり前が、
とても難しい時期がありました。
それでも私は、
少しずつ。
不安を抱えたままでも、
外へ出られるようになりました。
完璧に怖くなくなったわけではありません。
でも。
不安があっても、
出かけられる。
不安があっても、
帰ってこられる。
そんな経験が、
少しずつ私の中に増えていきました。
──────
もし今、
外へ出ることが怖くなっている方がいたら。
「普通に出かけられない自分はダメだ」
なんて、
思わないでくださいね。
家を出る。
電車に乗る。
人の中にいる。
ただそれだけのことに、
大きな勇気が必要な日もあります。
見えないところで、
あなたはたくさん頑張っています。
私にも、
そんな時期がありました。
「こんな人もいるんだ」
そう思ってもらえるだけで、
嬉しいです。
この場所が、
少しでも安心して息をつける場所になりますように。
出かける予定が入っただけで、不安になっていた頃の話
03. 嘔吐恐怖症


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