安心したくて、調べ続けた毎日

03. 嘔吐恐怖症

🌿
大学生の頃。

嘔吐恐怖症になった私は、
よくインターネットで検索をしていました。

「嘔吐恐怖症」

「吐くのが怖い」

「吐き気が怖い」

そんな言葉を、
何度も検索していました。

──────

最初は、
安心したかっただけでした。

自分と同じような人がいるのか。

自分だけがおかしいわけじゃないのか。

どうしてこんなに怖いのか。

何か分かることがあるかもしれない。

そう思って、
検索していました。

──────

でも。

いくら調べても。

なかなか、
自分が探しているようなものは見つからなくて。

検索すると出てくるのは、

クリニックや病院が発信している記事。

嘔吐恐怖症についての説明。

症状について書かれたもの。

そして、
医療機関が紹介している症例。

情報そのものは、
たくさんありました。

でも。

私が知りたかったのは、
少し違くて。

──────

「実際に、こういうことで悩んでいました」

「電車が怖かったです」

「食べることが怖くなりました」

「こんなことを考えていました」

そんな、

実際に経験した人の言葉。

それが、
なかなか見つかりませんでした。

──────

もちろん。

病院やクリニックが発信している情報も、
当時の私には必要でした。

「こういう症状があるんだ」

「私だけではないんだ」

そう思えることもありました。

でも。

どこか、
知りたいものとは違う。

「この怖さを抱えながら、毎日を過ごしていた人の話」が知りたかった。

そんな気持ちがありました。

──────

だから、
また検索する。

別の言葉で検索してみる。

少し言葉を変えてみる。

もっと具体的に検索してみる。

「同じ人はいないかな」

「私と同じような経験をした人はいないかな」

そうやって、
ずっと探していました。

──────

そして。

検索を続けていると、
症例や体験について書かれたものが、
たくさん目に入ってきます。

自分が経験したことのない症状。

自分が考えたこともなかったこと。

自分が知らなかった、「怖いこと」。

最初は、
ただ知識として読んでいました。

でも。

一度知ってしまうと。

今度は、

「これって、私にも起こるのかな」

と思うようになって。

──────

今まで、
そんなことを考えたこともなかったのに。

誰かの症例を読んだことで、

「そういうこともあるんだ」

と知る。

すると。

次に何か予定があるとき。

その情報が、
頭の中に出てくる。

「もし私もそうなったら?」

まだ経験していない。

今、何も起きていない。

それなのに。

知らなかった不安が、
一つ増えている。

──────

だから。

また検索する。

「じゃあ、
こういう場合はどうなんだろう」

「この症状は大丈夫なのかな」

「同じような人はどうしているんだろう」

そうやって調べているうちに。

また新しい情報が出てくる。

そして。

また新しいことが気になる。

──────

安心したくて、
調べ始めたはずなのに。

気づけば。

調べる前よりも、怖くなっている。

そんなことの繰り返しでした。

──────

それでも、
検索をやめられませんでした。

怖くなったからこそ。

「ちゃんと知っておきたい」

と思って。

知っておけば、
何か起きても大丈夫かもしれない。

知らないことのほうが、
怖い。

だから、
また調べる。

──────

私は、
安心できる答えを
ずっと探していたんだと思います。

「こういうときなら大丈夫」

「これは心配しなくていい」

「こんなことにはならない」

そんな答えが、
どこかにあると思っていました。

でも。

いくら調べても、
「絶対に大丈夫」という答えはありません。

一つ安心できる情報を見つけても。

「でも、こういう場合は?」

と、また気になる。

だから、
また調べる。

──────

そして。

知れば知るほど、
怖いことが増えていきました。

今まで知らなかったことを、
たくさん知ってしまう。

知らなければ、
怖がらなかったかもしれないことまで。

「こんなこともあるんだ」

と知ってしまう。

それが苦しかったです。

──────

でも。

そんな中でも、
ずっと探していたものがありました。

それは、

「私と同じような人の話」

でした。

症状の説明ではなく。

専門的な解説でもなく。

誰かの経験談。

実際に、
嘔吐恐怖症で悩んだ人が。

どんなことを怖いと思って。

どんなふうに毎日を過ごして。

どうやって、
少しずつ前に進んでいったのか。

そういう話が、
知りたかった。

──────

でも。

当時の私には、
それがなかなか見つからなくて。

だから。

ずっと、
どこか寂しかったんだと思います。

「私だけなのかな」

「こんなふうに悩んでいる人はいないのかな」

そんなことをずっと思っていました。

──────

そして。

時間が経って。

私は、
少しずつ自分の経験を振り返るようになりました。

あの頃、
私は本当に苦しかった。

電車が怖かった。

食べることが怖かった。

外へ出ることも怖かった。

身体のちょっとした変化まで、
怖かった。

いろんなことを検索して。

いろんなことを考えて。

何度も不安になった。

──────

そのとき。

ふと思いました。

もし。

あの頃の私が、
今の私が書いたような記事を見つけていたら。

少しだけ、
安心できたんじゃないかな。

「こんな人もいるんだ」

と思えたんじゃないかな。

「私だけじゃないんだ」

と、思えたんじゃないかな。

──────

だったら。

今度は、
自分が書いてみよう。

そう思いました。

病院の先生でもない。

専門家でもない。

何か特別な知識があるわけでもない。

ただ。

実際に嘔吐恐怖症で悩んだことがある私だからこそ、書けることがある。

そう思ったんです。

──────

だから、
このブログを始めました。

私が欲しかった言葉を。

私が探していた体験談を。

少しずつ、
残してみようと思いました。

──────

もちろん。

私の経験が、
すべての人に当てはまるわけではありません。

嘔吐恐怖症といっても、
怖いものや苦しさは人それぞれです。

だから、

「こうすれば大丈夫」

と、
言いたいわけではありません。

ただ。

「私はこうでした」

と、
伝えてみたい。

──────

昔の私が、
インターネットで探していたような。

「電車が怖かった人」

「食べることが怖くなった人」

「身体の感覚が怖かった人」

「何度も検索してしまった人」

そんな人の言葉が、
どこかにあったら。

きっと、
少しだけ心強かったと思う。

──────

そして。

今こうして、
私が文章を書いていることも。

もしかしたら、
昔の私のように検索している誰かに届くかもしれない。

「嘔吐恐怖症」

と検索して。

不安な気持ちで、
画面を開いて。

そこに、

「私もそうだったよ」

と書いてある。

それだけで、
少しだけ安心できることがあるかもしれない。

私は、
そんな場所を作りたいと思って、
今日に至っています。

──────

今の私は、
インターネットで調べることは
ほとんどなくなりました。

知らないことを知ることは、
もちろん大切です。

でも。

もし調べれば調べるほど、
怖くなってしまうときは。

一度、
画面を閉じてもいい。

全部を知ろうとしなくてもいい。

今すぐ、
答えを見つけなくてもいい。

──────

あの頃の私は。

「知らないこと」が怖かった。

だから、
たくさん調べました。

安心するために。

自分を守るために。

少しでも、
怖くない方法を探すために。

でも。

調べるほど、
知らなくてもよかったことまで知ってしまうことがある。

そして。

その情報が、
新しい不安になることもある。

──────

でも。

あの頃の自分に、

「そんなに調べなくてもいいよ」

とは言わないと思います。

きっと、
当時の私には、
それが必要だったんだと思うから。

──────

そして。

今度は、
私が書いておく。

あの頃の私が、
見つけられなかったような言葉を。

専門的な説明ではなく。

完璧な克服談でもなく。

ただ。

「私は、こんなふうに悩んでいました」

という経験談を。

──────

もし今。

嘔吐恐怖症について、
何度も検索している方がいたら。

同じような人を探している方がいたら。

もしかしたら、
私と同じように。

「自分だけなのかな」

と思っているかもしれません。

私も、
そうでした。

なかなか自分と同じような人の話が見つからなくて。

だから、
もっと知りたくなって。

たくさん調べて。

そして、
余計に怖くなったこともありました。

──────

でも今は。

あの頃の私が、
ずっと探していたものを。

少しずつ、
自分で作っていけたらと思っています。

誰かの不安を、
完全になくすことはできないけれど。

「私も同じだったよ」

と伝えることはできる。

「ここにも、
あなたと似た経験をした人がいるよ」

と、
伝えることはできる。

──────

それだけでも。

あの頃の私には、
きっと嬉しかったと思います。

だから、
このブログを書いています。

もしあなたが、
不安な気持ちでこの場所に来てくれたのなら。

少しだけ、
ここで休んでいってください。

答えを見つけなくてもいい。

全部を理解しなくてもいい。

ただ、

「こんな人もいるんだ」

そう思ってもらえるだけで、
私は嬉しいです。

この場所が、
少しでも安心して息をつける場所になりますように。

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